2022.03.22
〈黒伊佐錦〉誕生秘話【黒伊佐錦人気のヒミツ】
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先日〈黒伊佐錦〉の誕生について、「大口酒造50周年記念誌」よりご紹介しました。今回は、発売後ヒットに繋がった要因について、ご紹介したいと思います。
時は1987年、他にはない濃醇な芋焼酎として世に登場した〈黒伊佐錦〉。
発売後人気に火がつき、全国へとその名を広めていきました。
〈黒伊佐錦〉が受け入れられた要因や今後の焼酎造りについて、緒方社長の当時の思いも「大口酒造50周年記念誌」に掲載されています。
〈黒伊佐錦〉をヒットに導いた3大要素。
『環境的要因、デザイン、そして開発力。これら全てが〈黒伊佐錦〉をヒットへと導いた。』と、50周年記念誌に記されています。
環境的な要因、それは自然に恵まれた伊佐地区が焼酎作りに適した環境だったこと。〈黒伊佐錦〉には伊佐地方の地下水が使用されています。美味しい水は焼酎造りに欠かせません。さらに、冬場に気温が下がる伊佐地区では、寒暖の差が大きくなるため、焼酎を造る過程で出る余分な油性成分が固まることで、それらをろ過しなくても取り除くことができたようですよ。
また、デザインについては、「黒」を冠した大胆なネーミング、少し崩した豪快な筆文字ロゴ、それらが活きたラベルデザインが黒伊佐錦の酒質に見事にマッチした。実は〈黒伊佐錦〉という名称自体はある日の理事会で、「黒麹を使用するから黒伊佐錦でいい」の一声であっさり決まってしまったとか。
※当時は一般的に商品名に「黒」をつけるのはタブー視されていたようです
ラベルに使われている「伊佐錦」の文字は、白麹仕込みの伊佐錦で『海音寺潮五郎』先生が書かれたものと同じものを使用しています。ちなみに「黒」の文字は、鹿児島市内のデザイン会社に依頼したものになります。今では「黒」の文字が入ったラベルをよく見かけますが、当時では斬新なデザインと芳醇な味わいが相まって瞬く間に人気に火がついたようです。こうして〈黒伊佐錦〉は、焼酎における黒麹ブームの先駆けとなりました。
最後に開発力。こちらは前回の記事【黒伊佐錦誕生秘話】をご覧ください。
〈黒伊佐錦〉開発に携わった研究チームが一致団結して、何度も試行錯誤を重ねて濃醇で甘みのある独特の味を完成させました。
そして『売れ行きが伸びたのは卸会社や小売店、私たちを支えて下さった皆さんのおかげでしょう。』そう語る緒方社長。
大口酒造の製造部では、今でも「南九州酒販、河内源一郎商店、鹿児島県工業技術センター」のお三方には足を向けて寝るなと語り継がれているそうです。
時代とニーズに応じた進化を
時代が変わり、最近では焼酎を飲む女性も少しずつ増えてきています。ニーズは女性が作っているとよく言われますが、大口酒造でも女性の視点を大切にしています。
大口酒造の研究室には3名の若手女性研究員が在籍しており、男性とは違った視点や感性で新しい提案が生まれています。「彼女たちが選んだ意外な食材が焼酎にぴったりなんてこともあるんです。」と緒方社長。焼酎に馴染みのない若い世代に向けた新しい価値を提供しようと模索しています。最近では炭酸割り(ソーダ割り)など、現代の顧客の趣向に合わせた焼酎の楽しみ方も広がってきています。
焼酎造りで大切なこと
焼酎造りで最も大切なことは、【仲良く酒を造ること】。
「愚痴をこぼしながら造ると味が落ちる。ものづくりは『和気あいあい』が基本。ともに焼酎を造る仲間たちを大切にして欲しいと思います。」と語ってくれた緒方社長。
”自らと地域の未来を思い、意を決して新たな道に踏み出し、力を合わせておいしい焼酎を造る。”大口酒造に語り継がれる精神です。
緒方社長は言います。「これからも〈黒伊佐錦〉は変わらないで欲しいけど、時代と共に人々の嗜好も変わっていく。矛盾した言い方だけど、〈黒伊佐錦〉も時代に即した進化を遂げていくでしょう」。
最近ソーダ割りなど新しい飲み方に代表される通り、時代とともに人々の嗜好は変わっていきます。焼酎の質を保つために絶対に変わらないことも重要ですが、時代に即した進化を遂げていくことも〈黒伊佐錦〉の宿命なのかもしれません。
焼酎造りの技術や職人としてのプライド、地域を思う心、そして全員でひとつのものづくりに挑む覚悟を忘れずにおいしい焼酎を造り続けて行って欲しいですね。
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